「しかしあなたは」では意味が通らない "but you" の意味

"but you" は「しかし、あなたは~」と訳すと意味が通らないことがあります。 そんなケースにおける "but you" の意味を説明します。

1. "but you" の意味

1.1. 「しかし、あなたは~」が通用しないケース

例えば次の文は、"but you" を「しかし、あなたは~」と訳して意味が通ります。
My dog is white, but you said it isn't!
ぼくの犬は白い、けれど君はそうじゃないと言った!
# "it" は "my dog" を指す。
ところが次の2つの文では、"but you" を「しかし、あなた」と訳すと意味が通りません。
No one matters but you.
☓ 誰も重要じゃないんだ、しかしあなた(たち)は

# この例文の "one" は不特定の人を意味する言葉。 "matters" は「重要である」を意味する動詞 "matter" に三単現の "-s" が付いたもの。

"you" には「あなた」のほか「あなたたち」という意味もあります。 ここの "you" は「あなた」かもしれませんし「あなたたち」かもしれません。
I love but you.
☓ 私はあなたを愛している、しかしあなた(たち)

1.2. 「しかし、あなた」ではない "but you"

上の 2つの "but you" は、次のように訳すとスムーズに意味が通ります。
No one matters but you.
あなた(たち)以外には誰も重要じゃないんだ。
I love but you.
〇 私はあなた(たち)だけを愛している。

1.3. "but" の「しかし」以外の意味

"but" は「しかし」という意味が有名ですが、それに加えて次の2つの意味があります:

  1. ~を除いては、~のほかは (=except)
  2. ~だけ (=only, merely, just)

"No one matters but you." の "but" が 1. の意味で、"I love but you." の "but" が 2. の意味です。

"but" が「~だけ」の意味で使われるのは詩や文学作品など一部のケースです。 "but you" の "but" が「~だけ」の意味であることは少ないので、以下では「~を除いては、~のほかは」の意味の "but" について説明します。

2. 表現パターンの分類

2.1. パターンは2つ

"but you" が「あなた(たち)を除いては、あなた(たち)以外には」の意味で使われる表現は次の2つのパターンに分けられます:

  1. 「全員」や「ゼロ人」を意味する言葉 + 他の言葉 + "but you"
  2. 「全員」や「ゼロ人」を意味する言葉 + "but you"

「全員」や「ゼロ人」を意味する言葉とは、"everybody(みんな)" や "no one(誰も~ない)" や "anyone(誰でも)" などです。

パターン 1.

パターン 1. は "No one matters but you." のような文のことです。 この文の "matters" が上の分類の「他の言葉」に相当します。

パターン 2.

パターン 2. でよく使われる表現は次のようなものです:

  • no one but you
  • no one else but you
  • nobody but you
  • nobody else but you
  • nothing but you
  • anyone but you
  • anyone else but you
  • everybody but you

パターン 2. の各表現は、どれも「あなた(たち)以外は誰も」という感じの意味です。 意味の方向性(否定か肯定か)によって、"no one" や "nobody" か "anyone" や "everybody" かが異なります。

パターン 2. に使われる "else" は「そのほかの」の意味ですが、意味を強める役割しか持たないので気にしなくてOKです。

2.2. パターン 1. とパターン 2. の違い

パターン 1. とパターン 2. の違いは、"but you" がターゲットとなる(修飾対象の)言葉("no one" や "anyone" など)の直後に来るか来ないかです。

例えば、"No one matters but you." は、 "but you" が No one" の直後に来る "No one but you matters." でも同じ意味です。 でもそれだと動詞(matters)の前と後とで言葉の量のバランスが取れず頭でっかちなので、"but you" が "matters" の後ろに回ってバランスを取っています。

3. 例文

以下は、"but you" が「あなたを除いては、あなた以外には」の意味で使われる例文です(例文数は11)。
I want no one but you.
あなた以外の誰も欲しくない。
# "I want no one." だと「誰も欲しくない」。
I want no one else but you.
あなた以外の何者も欲しくない。
# 上の例文と意味はそう変わらない。
I want nothing but you.
あなた以外には何も欲しくない。
Do you think I want anyone but you, Kamal?
カマル、私が君以外の誰かを欲しがると思うかい?
# "I want anyone but you." だと「あなた以外なら誰でも欲しい」。 "I want anyone." だと「誰でもいいので欲しい」。
I don't think I want anyone but you to know.
私は君以外の誰かに(このことを)知ってもらいたいとは思わない。

# "I want anyone but you to know." では "anyone but you" が "to know(知る)" という動作(不定詞)の主語。

"I want anyone to know." なら「私は誰にでも知ってもらいたい」。 "I want you to know." なら「私はあなたに知ってもらいたい」。
Everybody laughed but you.
あなたを除いて全員が笑った。
# "but you" が修飾対象の言葉(ここでは "everybody")から離れているパターンの例。
No one knows but you.
あなたを除いては誰も知らない(あなた以外は誰も知らない)。
# これも "but you" が修飾対象の言葉(ここでは "no one")から離れているパターンの例。
No human being but you could have any chance of prevailing with her.
あなた以外の人類では彼女を説き伏せ得ないだろう。
# 「全員」を意味する言葉として "human being(人類)" が使われている例。 「あなた以外の誰にも~ない」を大げさに「あなた以外の人類の誰にも~ない」と言っているだけ。
What you've typed is meaningless to anyone but you. If you want a proper answer write a proper question.
あなたが入力した(ネットの掲示板に書き込んだ)のは、あなた以外にとっては(内容的に)無意味なものだ。 ちゃんとした回答が欲しいなら、ちゃんとした質問を書き込むことだな。
No one can stop her ─ no one but you two.
誰も彼女を止められない ─ 君たち2人を除いてはね。
# "but you" の "you" が「あなたたち」という複数の意味で使われている例。 "you two" は「あなたたち2人」という意味。
No one but you guys and Cleric Amandine know I'm a princess.
あなたたちと僧侶アマンダインの他には、誰も私が王女ということを知らないの。
# これも、"but you" の "you" が「あなたたち」の意味で使われている例。 "you guys" は "you" が複数を指す(「あなたたち」という意味である)ことを明示する表現です。(参考:"you" の複数形について分かりやすく解説

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