英語の不定詞には「To不定詞(to+動詞)」と動詞の原形だけの「原形不定詞」の2種類がありますが、このページではTo不定詞について説明します。 以下の説明において「不定詞」という言葉は「To不定詞」を意味します。
To不定詞とは
To不定詞とは、「to+動詞(の原形)」という組み合わせが名詞・形容詞・副詞として使われることです。
名詞的用法
「to+動詞」が名詞として使われる場合を「不定詞の名詞的用法」と言います。 「to+動詞」を「~すること」と訳して意味が通じるなら、その不定詞は名詞的用法でしょう。
下記のように、名詞的用法の不定詞は名詞と同じ機能を果たします。
日本語の「操作が必要だ」と「操作することが必要だ」が同じ意味であるのと同様に、英語の "Manipulation is necessary." と "To manipulate is necessary." も同じ意味です。
名詞(manipulation)が来る位置に不定詞の名詞的用法(to manipulate)が来ることができるというわけです。名詞的用法にしかできないコト
ただし、名詞では表現できず不定詞の名詞的用法でしか表現できないコトもあります。 だからこそ、不定詞の名詞的用法というのが出来たのでしょう。
生粋の名詞にはムリで不定詞の名詞的用法であれば表現できるコトとは、「~を...すること」という表現が含まれた内容です。
例えば、"pay(支払う)" という動詞には、これに対応する名詞 "payment(支払い)" が存在しますが、"pay 108 yen(108円を支払う)" という「動詞+目的語」に対応する名詞は存在しません。
これは、"pay" という動作の対象となるのが108円だけでは無いためです。 "pay" という動詞が108円以外の金額と共に使われることの方がむしろ多いのに、"payment" に「108円を支払う」という意味を持たせたり、"108-payment" などという単語を新たに作る(新しい言葉を作ることを英語で "coin" と言います)のが非効率的だからです。
17円玉や1124円札などの通貨が作られないのと同様に、「108円を支払うこと」を一語で表す名詞は存在しません。 しかしながら、英語でも日本語と同様に「108円を支払うこと」などの表現が必要な場面というのは当然存在します。
不定詞の名詞的用法を用いることで、どのような動詞でも、あるいはどのような動詞がどのような名詞と組み合わされていても、それを名詞化することが出来ます。
例えば、こうして作り出された "to pay 10,000 USD..." は名詞と同じ機能を持つので、名詞を使うのとほぼ同じ場所に使うことができます。
名詞的用法が使われる場所
不定詞の名詞的用法は生粋の名詞と同じ役割を果たすわけですから、生粋の名詞が用いられるのとほぼ同じ場所に使われます。 すなわち次の3箇所です:
主語
動詞の目的語
補語
名詞的用法が使われない場所
不定詞の名詞的用法は、間接目的語(SVOOの2つ目のO)・目的格補語(SVOCのC)・前置詞の目的語の位置には来ることができません。 こうした位置に動詞的な性質を持つ名詞が必要な場合には動名詞が用いられます。
ただし「前置詞の目的語」に関しては、不定詞に主語が付いている場合に前置詞の目的語として不定詞が用いられます。上の例文では "come back" の主語に当たる "for her" を挟んで、"to come back" という不定詞が前置詞 "for" の目的語となっています。
形容詞的用法
不定詞の形容詞的用法も名詞的用法と同様に、生粋の形容詞と同じく修飾対象の名詞について説明をするという働きをします。 したがって、文中の形容詞を不定詞の形容詞的用法と取り替えても文法的に正しい文となります。
ただし、生粋の形容詞が一部の例外を除いて修飾対象の名詞(例えば "edible flower" の "flower")の前に来るのに対して、不定詞の形容詞的用法は名詞の後ろに来ます。日本語との違いに注意が必要な点
例えば「木に登る」という表現を不定詞の形容詞的用法に変換する場合には、英語と日本語に違いは生じません:「動詞+前置詞+名詞」という構造が「名詞+不定詞の形容詞的用法(to +動詞+前置詞)」という構造に変換される場合には、このような現象が必ず生じます。
具体例①
例えば "talk about many things" という表現を不定詞にする場合にも次のようになります(日本語のほうの灰色の部分は "talk about many things" が不定詞になったときに消滅する):具体例②
この "on" も「~に座る(sit on)」の「~に」に当たる部分が残ったものです。 つまり、日本語では「家具に座る ⇒ 座るための家具」という具合に「~に」が消滅しますが、英語では「家具に座る ⇒ に座るための家具」という具合に「~に」が残るというわけです。
"sit" という動作の対象となる "a piece of furniture" が残っているのに、その "a piece of furniture" と "sit" の間をつなぐ役目をする "on" が無くなってしまうのはおかしいという発想なのでしょう。
副詞的用法
副詞の機能は、形容詞の修飾・副詞の修飾(副詞の修飾には副詞が用いられる)・文全体の修飾などですが、形容詞の修飾や副詞の修飾に用いられている不定詞の副詞的用法に関しては、生粋の副詞にきれいに置き換えられる例はあまりありません。
これは、一語だけの副詞には様態(どのようにか)を表す語が多いのに対して、不定詞の副詞的用法は目的・結果・原因など様々な意味を表すためです。 それはつまり、不定詞の副詞的用法が無ければ表現できない内容がいかに多いかということでもあります。
しかし、「副詞 ⇔ 不定詞の副詞的用法」 をきれいに置換できる例が無いわけでもないので、いくつか例を挙げてみましょう:
こちらは文副詞の例です。 文副詞は「strange to say ⇔ strangely」や「to begin with ⇔ firstly」 などのように、副詞一語に置き換えられる副詞的用法の例が多々あります。
不定詞の主語
不定詞の主語とは、「to+動詞」で表される動作を行う人やモノのことです。 不定詞の主語は文や節ののメインの主語と同じである場合には省略されています。 不定詞の主語を使いたいときには一般的に、その前に前置詞 "for"(場合によっては "of")を置きます:"to return(返品する)" という不定詞の主語が "her" となっており、その "her" を使うために "for" が用いられています。
上記例文の不定詞の部分を that 節に置き換えると次のようになります: