文の一部
"the longer it takes" は次の構造を持つ文(構文)の一部です:
the 比較級①(+主語+動詞)+ the 比較級②(+主語+動詞)
この構文の訳し方は「
比較級①であるほど、比較級②である」です。
"the longer it takes" の部分は倒置表現です。 元の語順は "it takes the longer"。
"the longer it takes" は比較級①または比較級②の部分に入ります。
訳し方
"the longer it takes" が比較級①の部分に来るときと比較級②の部分に来るときとで訳し方が異なります:
- 比較級①のとき →「所要時間が長くなるほど」と訳します。
- 比較級②のとき →「所要時間が長くなる」と訳します。
比較級①の部分に来るケース。
The longer it takes to happen, the more you appreciate when it finally does.
実現に要する時間が長いほど、それがようやく生じたときの有り難み(ありがたさ)が増す。
比較級②の部分に来るケース。
The faster you are driving,
the longer it takes for you to react to other drivers' unexpected moves.
(自動車を)運転する速度が速いほど、他のドライバーの思わぬ動きに反応するのに要する時間が長くなる。
2.2.1 "takes" について
"the longer it takes" の "take" は「要する、必要とする」という意味です。
以下は、"take" が「要する、必要とする」の意味で使われている例文です。
It
takes money to live in this town.
この町で暮らすのは、おカネがかかる。
It only
takes a few minutes to wash the car.
その車はわずか数分で洗える。(洗うのに数分のみ要する)
It
takes nerve to do what she did.
彼女がやったことをするには度胸が必要だ。
この意味の "take" は主語が「
形式主語の "it"」(
下記)であることが多いですが、そうでないこともあります。
This camera
takes 35-millimeter film.
このカメラには35ミリのフィルムが必要だ。
2.2.2. "it" について
"the longer it takes" の "it" は
形式主語だと考えて良いでしょう
(*)。
(*) "the longer it takes" の "it" を文中の既出の名詞を指し示す「それ」の意味で使うケースも稀にあるかもしれません。
形式主語とは
形式主語とは、主部が不定詞や名詞節などで長くなるときに、主部が本来ある位置に仮の主語として置かれる "it" のことです。
以下で、「2.1. 全体像」で用いた2つの例文で形式主語の使われ方を説明します。
例文①
The longer
it takes
to happen, the more you appreciate when it finally does.
実現に要する時間が長いほど、それがようやく生じたときの有り難み(ありがたさ)が増す。
この例文の "it takes to happen" の主部は "to happen" です。
この "to happen" は
不定詞の名詞的用法で、「生じること」を意味
(*)します。
(*) 上の例文の和訳では "to happen" を「実現すること」とも訳しています。
"the longer it takes to happen" の形式主語を止めると "the longer to happen takes" です。 "to happen" が主語で、"takes" が動詞。
しかし、主部が不定詞のときには形式主語が使われるのが常なので、仮の主語として "it" を持ってきて "to happen" を後ろに回し、"it takes to happen" としています。
例文②
The faster you are driving, the longer
it takes
for you to react to other drivers' unexpected moves.
(自動車を)運転する速度が速いほど、他のドライバーの思わぬ動きに反応するのに要する時間が長くなる。
# "for you to react to other drivers' unexpected moves" が不定詞の名詞的用法で、この文の主部。 "for you" の "you" は不定詞 "to react" の主語。 不定詞の主語を示すには前置詞 "for" を用いる。
"it takes for you to react to other drivers' unexpected moves" を、
形式主語を止めると次の通り(太字の部分が主部):
for you to react to other drivers' unexpected moves takes
主部が長すぎて頭でっかちです。 頭でっかちを解消するために、主部の位置に仮の主語として "it" を置き、本来の主部を後ろに回します。
2.2.3. 「時間」を意味する語はどこ?
"the longer it takes" では「時間」を意味する語が省略されています。
省略されている語は "time" だと考えて差し支えありません。
省略されている "time" を補うと次の通り:
the longer (time) it takes
省略されているのが「時間」以外であることは?
理屈の上では、"the longer it takes" で省略されているのが
「時間」以外のもの(*) であることも考えられます。
(*) 例えば「距離」。 「距離」も「時間」と同じく「長い(long)」という語で形容される。
しかし、"the longer it takes" で検索しても、「時間」以外のものが省略されているケースは見つかりませんでした。
ただ、省略されていないケースなら見つかりました。 次の文では、"the longer" の後ろに "distance" が省略されずに残っています。
The faster the speed, the longer
distance it takes to stop.
速度が速いほど、(車が)止まるのに必要な距離が長くなる。
# 直訳は「(車は)止まるのに、より長い距離を必要とする」。
"the longer it takes" では、"longer" の後ろに必ず何かの名詞が省略されています。 しかし慣用的に、そのように省略されるのは「時間」だけなのかもしれません(「距離」は省略されない)。
2.2.4. "the" について
形容詞の比較級に "the" が使われることは普通はありません("the" が付くのは最上級)が、「the 比較級①+ the 比較級②」は構文なので例外的に "the" が使われます。
the 比較級 + the longer it takes
The more you scratch,
the longer it takes to heal.
(治りかけた傷口が痒いからといって)掻くほどに、治るのが遅くなる。
# 直訳は「治るのにより長い時間がかかる」。 "scratch" は「掻く」、"heal" は「治る」。
The longer a pendulum is,
the longer it takes to swing.
振り子が長いほど、揺れるのに時間がかかる。
# 時計の振り子が長いほど、1往復に要する時間が長くなる。 "pendulum" が「振り子」。
The farther something falls,
the longer it takes to hit the ground!
落下する距離が長いほど地面に激突するまでの時間が長い!
The longer it takes + the 比較級
The longer it takes to find a bug, the smaller the required fix will be.
(コンピューター・プログラムの)バグを見つけるのに要する時間が長いほど、バグの修正(fix)は少なくてすむだろう。
# 小さいバグ(不具合)は見つけにくいが、小さいだけに、いったん見つかれば直すのは簡単。
The longer it takes to agree, the less valuable it is.
合意に達するまでの所要時間が長いほど、その合意は価値が低い。
# 揉めに揉めたすえに(長い時間をかけて)なされた合意は、合意の当事者たちがそれぞれに随分と妥協した合意だから、合意が守られなかったりすぐに破棄されたりしやすい。
The longer it takes to learn it, the longer you will have the skill.
習得に要する時間が長い技術ほど失われにくい。
The longer it takes to hear back after an interview, the less likely it is that you'll be receiving good news.
面接後の(面接した会社からの)返事が遅いほど、その返事が吉報(採用)である可能性が低い。