セレンディピティ(serendipity)の意味と語源と事例

意味

「セレンディピティ」は "serendipity" という英語をカタカナで表記した言葉です。

"serendipity" の意味を複数の辞書で調べた結果を総合すると次のようになります:

「求めてはいないが有益な、そんなことに偶然に出くわす幸運または才能」

各辞書に記載されている定義(私が総合する前の各定義)が気になる人は「参考」をご覧ください。

セレンディピティの事例

  • ドイツの物理学者ヴィルヘルム・レントゲンによるX線の発見。(1895年) そもそも別の研究をしていて気付いた。
  • 英国の生化学者アレクサンダー・フレミングによるペニシリンの発見。(1928年) ブドウ球菌の培養実験中に混入してしまったアオカビの周囲でブドウ球菌の生育が阻まれるのに気付いた。
  • 米国の物理学者/発明家パーシー・スペンサーによる電子レンジの発明。(1945年) レーダー機器が発するマイクロ波でチョコレートが溶けたのに気付いたのがきっかけ。
  • 米国3M社のスペンサー・シルバー博士による「Post-it」というメモ用紙の粘着剤の発明。(1968年)「Post-it」は背面が粘着性で何度も貼り付けられるメモ用紙。 超強力な接着剤を開発しようとしていたら低粘着性で何度もくっつく接着剤を開発してしまった。 この発明は「問題なきソリューション(そもそも問題が存在してないのにソリューションだけが見つかった)」と呼ばれた。
  • とある学生が Twitter にジャーナリズムに関する熱意あふれるツイートをしたところ、ジャーナリズム関係の企業からインターンシップのオファーが来た。
  • 建築を先行する学生がBBC(英国のテレビ放送)のドキュメンタリー番組でミツバチを見ていて、蜂の巣のような六角形を建築デザインに利用するアイデアを思いついた。

語源

"serendipity" という言葉は、"serendip" と "-ity" を組み合わせて作られた造語です。

  • "serendip" は「スリランカ」を意味するペルシャ語です。
  • "-ity" は名詞を作るための接尾辞です。

"serendipity" という言葉を作ったのはホリス(ホレス)・ウォルポールという18世紀の英国貴族です。 ホリスは4代目オーフォード伯爵で、英国で最初の首相に就任したロバート・ウォルポールの息子です。

"serendipity" という言葉の初の使用例として記録に残っているのは 1754年にホリスが従兄弟(Horace Mann)に宛てた手紙です。

"serendipity" の "serendip" は「The Three Princes of Serendip」というおとぎ話に由来しています。 詳しくは、下記の「参考」にあるホリスの手紙の内容を参照してください。

参考

生の意味

複数の辞書(*)で "serendipity" の定義を調べた結果は次のようなものでした:

  1. 幸運
  2. 幸運な発見を偶然になす能力
  3. 幸運な発見を偶然になすこと
  4. 幸運な発見を偶然になした事例
  5. 好ましい発見を偶然になす才能
  6. 偶然になされる興味深い、あるいは価値ある発見
  7. 興味深いあるいは好ましい何かが偶然に起こること
  8. 好ましいあるいは有益なものを偶然に見つけること
  9. 幸運な発見を、別のものを探しているときになす能力
  10. 偶然に、求めていない予期せぬ経験(発見や学習)をすること
  11. 興味深いものや価値あるものを偶然に見つけたり作ったりできる幸運
  12. 求めていないときに価値のあるもの、あるいは好ましいものを見つける能力あるいは現象
(*) このサイトの参考文献に挙げているオンライン辞書と、このページに挙げているオンライン辞書。

1754年の手紙

ホリスの 1754年の手紙の "serendipity" に関する部分が The Travels and Adventures of Serendipityという書物に記載されています。

この発見(1)は実のところ、私が「セレンディピティ」と呼ぶものにほぼ相当する。 [...] この言葉の意味は定義を述べるよりも由来を述べたほうが分かりやすいだろう。

私は前に「The Three Princes of Serendipセレンディップの3人の王子)」という馬鹿げたおとぎ話を読んだことがある。 旅を続ける王子たちが偶然と聡明さにより求めてもいないものを見つけてばかりいるという話だよ。 例えば次のようなという具合だ:

「王子の1人が気付いた。 右目が見えないラバ(2)が自分たちが今通っている道をさっき通ったに違いない。 道の右側よりも左側のほうが草の茂り具合が悪いのに、左側の草ばかり食べられている」

この偶然的な聡明さ(セレンディピティ)の顕著な事例としてシャフツベリー卿のケースだ。 彼は大法官クラレンドンの家で食事をしているときに、お嬢さんに母親が接するときの恭(うやうや)しさからお嬢さんとヨーク公爵との婚姻を察したんだ。

(1) ベネチアの家紋に関する古書物で見つけたカペロ家の家紋に関する重要な発見。

(2) 正しくはラクダ。 恐らくホリスの記憶違い。

3人の王子の話にしても大法官のエピソードにしても、伝えているのは幸運や偶然の発見ではなく推理能力の高さです。 ホリス自身も "serendipity" の定義を明言していませんから、ホリスは "serendipity" という言葉を作り出しはしましたが "serendipity" の意味を決定した当人ではないでしょう。

The Three Princes of Serendip

Wikipedia の「The Three Princes of Serendip」のページによると、「The Three Princes of Serendip」の最初のエピソードは次のようなものです:

セレンディップの王様には3人の王子がいました。 王様は王子3人の教育に余念がなかったのですが、王子たちを旅に出して色々と体験させることが大切だと考え、王子たちを旅に追い出しました。

旅先で王子たちはラクダの痕跡を見つけ、そのラクダが足が不自由なこと、片目が見えないこと、妊婦を乗せていることなどを驚くべき聡明さで推理します。

ラクダを失くしたと言う商人に出会ったので、王子たちが自分たちの推理したラクダのことを伝えると、商人は王子たちがラクダを盗んだと決めつけ、裁きを求めて皇帝のもとへ連れていきました。

皇帝は王子3人に尋ねます。

「そなたらがラクダを(盗んだのはおろか)見たこともないというなら、ラクダの特徴を色々と把握しておるのはどうしてなのだ?」

そこで王子たちは、自分たちがどのようにしてラクダの存在や特徴を推察したかを王様に告げてゆきました。

そうして告げている最中に1人の旅人がやって来て、商人のラクダが砂漠をウロウロしているのが見つかったと報告します。

こうして王子たちの無罪は明らかとなり、王子たちは皇帝から褒美を与えられました。