"pay for~" の意味は? "pay~" との違いは?

質問: "pay for~" とは、どういう意味ですか? 単なる "pay~" との違いを教えてください。

回答: "pay for~" の意味は「~を得る代価として(支)払う」です。

"pay~" との違いなど、詳しくは以下をご覧ください。

1. "pay~" と "pay for~" の意味

それぞれ次の意味です:

  • pay X(人)・・・ Xに(支)払う
  • pay Y(物)・・・ Yを(支)払う
  • pay for(1) (物)・・・ Zを得る代価(2) として(支)払う

(1) 前置詞 "for" には「~と引き換えに」という「交換」の意味もあり、"pay for" の "for" はその意味です。

(2)「代価」とは「代償として受け渡しされる価値あるもの」。「代金」も「代価」の一種。

2. "pay" と "pay for" の成り立ち

2.1. 基礎となる文

先ほどのXYZを用いてを言い表すと、「(支)払う」とは「Zを得る代価としてXにYを差し出す」ことです。

これを英語にすると "pay X Y for Z"。 これの一部が省略されたのが "pay X" や "pay Y" や "pay for Z" です。

ですが省略については後回し。 とりあえず "pay X Y for Z" を理解してしまいましょう。

次に示す例文で "pay X Y for Z" を一目で理解できます。
She pays me(X) £200 a week(Y) for this apartment(Z).
《直訳》 彼女はこのアパートの(に住む)代価として週に200ポンド私に支払う。
《意訳》 彼女はこのアパートの家賃として週に200ポンドを私に支払う。

#「£」は英国の通貨単位「ポンド(pound sterling)」を表す記号。

"£200 a week" は「1週間あたり200ポンド」。 この "a" は「~あたり」を意味する "per" と同じ。 "£200 a week" で「1週間あたり200ポンド」。
  • me(X)・・・ 人(代価の行き先)
  • £200(Y)・・・ 主語が与える物(代価)
  • for this apartment(Z)・・・(代価と引き換えに)主語が得る物
上記の例文は第4文型(SVOO)です。

2.2. 省略

"She pays me(X) £200 a week(Y) for this apartment(Z)." のXやYやZの部分は文脈に応じて省略されます。

そうして省略された結果が、"pay~" と "pay for~" です。

2.2.1. pay~

Zが省略されると "pay~" です。

"pay~" は "pay X" または "pay Y" だけの場合と "pay X Y" の場合とがあります。

pay X
She pays me.
彼女は私に支払う。
# 第3文型(SVO)
pay Y
She pays £200 a week.
彼女は週に200ポンドを支払う。
# 第3文型(SVO)
pay X Y
She pays me £200 a week.
彼女は私に週に200ポンドを支払う。
# 第4文型(SVOO)

2.2.2. pay for~

XとYが省略されると"pay for~" です。
She pays for this apartment(Z).
《直訳》 彼女はこのアパートの(に住む)代価として支払う。
《意訳》 彼女はこのアパートの家賃を支払う。
# この文は第1文型(SV)です。 "for this apartment" が副詞句なので文の構成要素にカウントされません。 5文型では副詞を文の要素と見なしません。
《意訳》について

《意訳》では、"pays" の後ろに「家賃(rent)」を意味する言葉(*)補って訳しています。

(*) 元の例文では "£200 a week" が "pay" の目的語ですが、汎用性のある語として "rent"。

"rent" を補った "She pays the rent for this apartment." の直訳が「彼女はこのアパートに住む代価として家賃を支払う」。 それを丸めたのが「彼女はこのアパートの家賃を支払う」です。

2.2.3. 色々な組み合わせ

XだけをZと組み合わせる(Yを省略する)パターンも、YだけをZと組み合わせる(Xを省略する)パターンも可能です。

XYZを何1つとして登場させない(例. "I pay.")のも正しい英文です。

3. 誤用例

次の2つの文のうち△のほうは正しくありません("for" が無い)。
○ I'll pay for the tickets.
△ I'll pay the tickets.

△の文が正しくないのは、"for" の欠如により、"pay (X) (Y) for Z" の "Z" であるはずの「チケット」が "Y" と見なされるからです。

どうダメなのか?

"I'll pay the tickets." は文法的には間違っていません(ですので☓ではなく△)。 けれど非現実的です。

現実の世界では金銭を差し出してチケットを受け取るのが普通ですが、"I'll pay the tickets." ではチケットを差し出して謎の何かを受け取ります。

先程の例文の和訳は次の通り:

○ I'll pay for the tickets.
△ I'll pay the tickets.
○ 私がそのチケット(の代金)支払おう。
△ 私はそのチケット支払おう。
# △の文も「そのチケット支払う」と訳せますが、その訳では○の文と区別がつきません。なので、ここでは意図的に「そのチケット支払う」と訳しています。「~支払う」という日本語は、英語の "pay Y" と "pay for Z" のどちらにも取れる曖昧な言い方です。

おかしさを浮き彫りに

"I'll pay the tickets." に "for Z" を補うと、おかしさが明白になります。
I'll pay the tickets for your oranges.
君のオレンジの代価として私はチケットを支払おう。
# チケットを差し出してオレンジを受け取ります。 物々交換です。

私たちにふさわしい文

貨幣が存在する世界に生きる私たちには、次の文がふさわしい。
I'll pay £200 for the tickets.
そのチケットの代金として私は200ポンドを支払おう。

4. "pay for~" の「~」の部分に入るモノ

4.1.「商品」や「サービス」

"pay for~" の「~」の部分に入るモノとして最も一般的なのは「商品」や「サービス」です。
I'll pay for the tickets.
《直訳》 チケットの代価として私が支払おう。
《意訳》 チケットの代金は私が支払うよ。

"pay" の後ろに「代価」を意味する言葉が省略されています。

4.2.「幸せ」など

"pay for~" の「~」の部分には「幸せ」なども入ります。
Why must women pay the price for men's happiness?
どうして女性が男性の幸せの代価を払わねばならないの?
#「どうして男の幸せのために女が犠牲にならねばならないの?」ということです。

4.3.「過ち・罪」など

"pay for~" の「~」の部分に「過ち、罪、無知」などの言葉が入ると、その "pay for~" は「過ち・罪の代価を支払う」つまり「~の報いを受ける」という意味です。
You'll pay for that remark!
《直訳》 あなたはその発言の代価として支払うことになる!
《中間》 あなたはその発言の代価を支払うことになる!
《意訳》 お前は今の発言の報いを受けるぞ!

# "remark" は「発言」を意味する名詞。 動詞の意味もあるが、ここでは名詞。

"pay" の後ろに "the price" など「主語が与える物(代価)」を意味する言葉が省略されていると考えます。
"for" を伴わない "pay" も、「報いを受ける」の意味で使われます。 例. I'll make him pay! 彼に報いを受けさせてやる!(奴に仕返ししてやる!)

"pay Y" と組み合わせて

「~の報いを受ける」の意味の "pay for Z" も "pay Y for Z" の形で使えます。
They will pay their lives for their crimes.
《直訳》 彼らは彼らの犯罪の代価として彼らの生命を支払うだろう。
《意訳》 彼らは自分たちが犯す(犯した)犯罪の報いを受けて死ぬだろう。

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