質問: 辞書に "kill oneself" や "enjoy oneself" などと記載される "oneself" とは、何ですか?
回答: 再帰代名詞("myself" や "herself" など)の代表例です。
詳しくは以下をご覧ください。
1. 辞書における "oneself" の用途
1.1. 再帰代名詞は形を変える
遠回りになりますが、説明の都合上まず再帰代名詞について述べます。
再帰代名詞は主語に応じて形を変えます。 主語が "I" なら "myself" ですし、主語が "they" なら "themselves"。
次に用例を示します。
I will kill myself.
私は自殺するつもりだ。
We enjoyed ourselves.
私たちは楽しんだ。
"-self" は複数形では "-selves" に変化します。 "knife"(ナイフ)や "leaf"(植物の葉)の複数形が "knives" や "leaves" なのと同じです。
1.2. 列挙は不便
主語に応じて形を変える再帰代名詞ですから、再帰代名詞を含有する慣用表現を辞書や文法書で扱うときには全ての再帰代名詞を記載する必要があります。 ですが全てを列挙するのは不便です。
そこで、再帰代名詞の代表例として "oneself" を用うわけです。
次のセクションで具体例を挙げます。
1.3. 具体例
例えば「私は自殺する」は英語で "I will kill myself."。 ですが:
- 「自殺する」に相当する英語として辞書に "kill myself" と記載すると、主語が "I" の場合にしか対応できません。 "kill myself" と書かれた辞書を見た人は、「主語が "you" でも "she" でも "they" でも "kill myself" なのだなあ」と勘違いしてます。
- かと言って、「自殺する」に相当する英語として辞書に "kill myself/yourself/herself/himself/itself/yourselves/ourselves/themselves" と列挙するのはスペースと労力の無駄ですし読む側も大変です。
そこで、これらの再帰代名詞の代表例として "oneself" を用います。 英語の辞書で、例えば「自殺する」は "kill oneself"、そして「楽しむ」は "enjoy oneself" と記載されます。
2. 言葉の成り立ち
"oneself" は "one" と "-self" から成ります:
- one ・・・「者/物」や「人(の総称)」などを意味する代名詞。
- -self ・・・「~自身」を意味する接尾辞。
3. "oneself" の用途は再帰代名詞の代表だけではない
"oneself" 自体も実際の英文に使われます。 主に、主語 "one" に対応する再帰代名詞として使われます。
"one" が主語の場合
It is only through study that one really begins to know oneself.
人が自分自身を本当に知り始めるのは勉学を通してのみである。
# この例文から分かるように、「人(の総称)」の意味の "one" に対応する再帰代名詞が "oneself" です。
「人」を意味する代名詞 "one" が性別的に無色透明だから、再帰代名詞の代表例として "oneself" で使われるのでしょう。
潜在的な主語が "one" の場合
It is difficult to make oneself concentrate for long periods.
長時間にわたり自分自身を集中させるのは困難である。
# "difficult" の後ろに "for one" が省略されていると考えられます。 省略されている "for one" は不定詞 "to make" の主語です(不定詞の主語を明示するには前置詞 "for" を使う)。