質問: マグネシウムと磁石は関係ありますか? マグネシウムの「マグ」はマグネット(磁石)の「マグ」ですか? もしかして磁石にくっつくから「マグネシウム」ですか?
回答: マグネシウムと磁石は関係あります。 ですが、磁石にくっつくから「マグネシウム」と呼ばれるのではありません。 マグネシウムは磁石にくっつきません。
詳しくは以下をご覧ください。
マグネシウムと磁石の関係
マグネシウムとマグネット(磁石)は語源が同じです。
それぞれの語源を次に記載します。
1. マグネット(磁石)の語源
「マグネット(magnet)」の語源は、「マグネシアの石」を意味する古代ギリシャ語「μαγνῆτις λίθος(magnêtis líthos)」です。
古代ギリシャ語「μαγνῆτις λίθος」から「磁石」を意味するラテン語 "magnēs" 次いで古フランス語 "magnete" を経て、英語の "magnet" が成立しました。
「マグネシアの石」の「マグネシア」とは何のことでしょうか? その正体について次の2つの説があります:
- 紀元前6世紀以前に小アジア(*) に存在したリュディア王国の都市「マグネシア(Μαγνησία)」
- 古代からギリシャに存在する地域「マグネシア(Μαγνησία)」
(*) 具体的には、現在のトルコのマニサ県の辺り。
結局
リュディア王国の都市「マグネシア」はギリシャの地域「マグネシア」の植民地でした。 だから、どのみち「マグネット」の語源はギリシャの地名「マグネシア」だとも言えます。
2. マグネシウムの語源
「マグネシウム(magnesium)」の語源は前出のギリシャの地名「マグネシア」です。
化学物質「マグネシウム」を命名したのは英国の化学者ハンフリー・デイビー(Humphry Davy、1778~1829年)。 彼がマグネシウムを「マグネシウム」と命名したのは、彼がマグネシウムを酸化マグネシウム(英語で "magnesia" と呼ばれる)から分離(発見)したからです。
ハンフリー・デイビーは酸化マグネシウムの英名 "magnesia" にちなんで「マグネシウム」と命名したわけです。
酸化マグネシウムが英語で "magnesia" と呼ばれるのは、酸化マグネシウムの鉱石が古代ギリシャの「マグネシア」で採れたことに由来します。
整理しよう!
小難しいので時系列に沿って整理しましょう。 次の通りです:
- 酸化マグネシウムの鉱石が古代ギリシャの「マグネシア」で採れた。
- だから英語で酸化マグネシウムのことを "magnesia" と呼ぶ。
- 英国の化学者ハンフリー・デイビーが酸化マグネシウム(magnesia)から分離した物質を「マグネシウム」と命名した。
3. まとめ
- 「マグネット(磁石)」の語源は2つの説があるが、突き詰めればどのみちギリシャの地名「マグネシア」
- 「マグネシウム」の語源もギリシャの地名「マグネシア」
ギリシャの地名「マグネシア(μαγνῆτις)」は、古代ギリシャの部族「Μάγνητες(Magnetes)」に由来するとされます。 部族名「Μάγνητες」の由来は不明です。