「ギブアンドテイク」の意味は? 英語とカタカナ語の意味の違いは?

ギブアンドテイク」という表現がありますが、この表現はどういう意味なのでしょうか? 「ギブ」と「テイク」それぞれは一体どういう意味なのでしょうか?

1.「ギブアンドテイク」は "give and take"

「ギブアンドテイク」は "give and take" という英語をカタカナで表記した言葉です。

2.「ギブアンドテイク」の意味

カタカナ語の「ギブアンドテイク」は「互いに利益を与え合う」という意味です。 相利共生の関係というわけです。

国語辞典(デジタル大辞泉)でも「相手に利益を与え、自分も相手から利益を得ること」と説明されています。

3. "give and take" の意味

ところが、英語の辞書で "give and take" の意味(カタカナ語ではない英語本来の意味)を調べると、「互いに利益を与え合う」とは少し違う意味が記載されています。

(カタカナ語「ギブアンドテイク」ではない)英語の "give and take" の意味は次のようなものです:

  1. 折り合いをつける(こと)、互いに譲歩し合う(こと)、互いに歩み寄る(こと)、交渉する(こと)、折衝(する)
  2. 議論を交わし意見を交換する(こと)
"give and take" は名詞および動詞として使われます。 形容詞として使われることもあります。 "give and take" は、"give-and-take" という具合にハイフンで連結されることもあります。

"give and take" の意味を「お互いに相手方の希望や視点に耳を傾け、必要とあらば自分の側の要求を変更すること」と説明する辞書もあるので、"give and take" の意味は上記の2つの意味に明確に分かれるわけでもないでしょう。

4. "give and take" の用例

4.1. "give and take" が「意見交換」の意味で使われるケース

このケースの "give and take" は、カタカナ語「ギブアンドテイク」の「互いに利益を与え合う」という意味に訳すと文の意味が通りません。

The purpose of this meeting is to have a bit of give-and-take between employees and the management for ideas on the direction of the company.
この会議の目的は、我が社の方向性について従業員と経営陣とのあいだでちょっとしたギブアンドテイクを行うことにある。
#「意見交換」の意味。 カタカナ語「ギブアンドテイク」の「利益を与え合う」では意味が通らない。
The university has set up an online forum so students are able to give and take with the administration.
その大学は、学生が大学側とギブアンドテイクできるようにとオンラインのフォーラムを用意した。
#「利益を与え合う」では意味が通らない。 「意見交換」の意味。

4.2. "give and take" が「折り合いをつける」の意味で使われるケース

このケースの "give and take" は、カタカナ語「ギブアンドテイク」の「互いに利益を与え合う」という意味に訳しても文の意味が通じます。 「折り合いをつける」と「互いに利益を与え合う」の意味が似ているからです。
でも意味がイコールではないので、「互いに利益を与え合う」ではなく「折り合いをつける、互いに歩み寄る」などと訳すべきでしょう。
You won't get far in this business if you aren't willing to allow a little give-and-take with your competitors.
この業界では、競合相手との間でのギブアンドテイクをいささかも許容できないなら成功はおぼつかない。
You have to be willing to give and take when you enter politics, otherwise nothing will ever get done.
政界に入ったら積極的にギブアンドテイクしなくては何もできないよ。
# カタカナ語の「利益を与え合う」のほうが意味が通りそうだが、「折り合いをつける」の意味だろう。
If we want this marriage to be successful, we both have to learn to give and take.
この結婚を成功させたいなら、私たち2人ともがギブアンドテイクを学ばなくては。
# 「譲歩し合う」の意味。「利益を与え合う」でも意味は通るが、情愛に欠ける。
You never get everything you wish for in these give-and-take situations.
こうしたギブ&テイクの状況では決して、自分が望む全てを得られない。
# 形容詞の "give-and-take" の例。

5. "give" と "take" が担当する意味

ここからの話は英語 "give and take" とカタカナ語「ギブアンドテイク」の意味の違いについてではありません。

5.1. "give" と "take" それぞれの意味

"give(ギブ)" の基本的な意味は「与える」で、"take" の基本的な意味は「受け取る」です。

したがって "give and take" では、"give" が「(譲歩や意見を自分が相手に)与える」の意味を担当し、"take" が「(譲歩や意見を自分が相手から)受け取る」の意味を担当すると考えられます。

カタカナ語ギブアンドテイク」でも(英語の "give and take" と少し意味が違うものの)同様に、「ギブ」が「(自分が相手に)利益を与える」という意味を担当し、"take" が「(自分が相手から)利益を受け取る」という意味を担当するはずです。

5.2. "give" と "take" の意味を理解をしていないと...

しかるに、先日ライトノベルを読んでいて次の表現に遭遇しました:

ギブしてもらったらテイクしなければならない
ギブとテイクを比較すれば、圧倒的にギブされている。
ギブされたら、ちゃんとテイクしないとな。

こうした不適切な表現が生まれたのは、「ギブ」を「相手から利益を与えられる」という相手側の行為の意味に、そして「テイク」を「相手に利益を与える」という自分の側の行為の意味に、それぞれ間違って理解しているためでしょう。

ギブ」については行為の主に関して間違っています。 「テイク」については行為の内容に関して間違っています。

「ギブアンドテイク(give and take)」では、「ギブ」も「テイク」も自分の側の行為です。「ギブ」が「自分が相手に与える」という意味で、「テイク」が「自分が相手から受け取る」という意味です。

ですから、上の各表現は次のように訂正されます:

☓ ギブしてもらったらテイクしなければならない
○ テイクしたらギブしなければならない
△ ギブとテイクを比較すれば、圧倒的にギブされている。
○ ギブとテイクを比較すれば、圧倒的にテイクしている。
☓ ギブされたら、ちゃんとテイクしないとな。
○ テイクしたら、ちゃんとギブしないとな。

原因の分析

このような間違いが生じる原因は次の2点にあります:

  1. 「ギブ(give)」の意味は知っているが、「テイク(take)」の意味は知らない
  2. 「ギブアンドテイク」の「ギブ」が相手側の行為だと誤解している。
    正しくは「ギブ」も「テイク」も自分が行う行為です。 自分が相手に与え(ギブ)、自分が相手から受け取る(テイク)わけです。

2.の誤解は1.の無知に起因します。 「テイク」の意味を知らないために、「ギブ」と「テイク」が誰が行う行為であるのか(誰が主語なのか)に関して混乱が生じます。

5.3. 恥をかかないためには

  1. むやみに分解しない - 「ギブアンドテイク」という言葉を「ギブ」と「テイク」に分解して使わなければ、上記の例のように「ギブ」と「テイク」の意味に関する認識の間違いを露呈して恥ずかしい思いをすることもありません。
  2. 「テイク」の意味を忘れない - 「ギブアンドテイク」を分解して使いたいなら、「ギブアンドテイク」の「テイク」が「(自分が相手から)受け取る」という意味だと覚えておきましょう。

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