1. 言葉の意味
1.1. err
"err" は動詞で「誤る、間違いを犯す、ミスをする」という意味です。
"Err." だけ(命令文)で「間違いなさい」という意味になります。
1.2. on the side of...(on the...side)
"on the side of..." も "on the...side" も意味は同じで「...の側に、...のほうに」です。
使い分けの指針
- 「...」の部分に入るのが、"on the side of..." では名詞ですが "on the...side" では形容詞です。
- "on the...side" では「...」の部分が(たぶん)常に1語です。 "on the side of..." は1語でも2語以上でもOK。
2. フレーズの意味
2.1. 直訳
"err on the side of..." や "err on the...side" を直訳すると、「...の側に間違う」です。
例えば
例えば "You err on the side of caution." の直訳は「あなたは用心の側に間違う」です。
2.2. 伝統的な意味
"err on the side of..." や "err on the...side" の伝統的な意味は「...し過ぎる」です。
例えば
例えば "You err on the side of caution." なら「あなたは用心し過ぎる(慎重すぎる)」です。
この例の解釈
物事には「
用心(caution)」の
側(side)と「不用心(non-caution)」の
側(side)がある。 用心すぎるのも、不用心すぎるのも不適切。 適度に用心するのが妥当。 でも、あなた(You)は心配性だから「用心」の側に偏(かたよ)る形で
誤って(err)しまう。
2.3. 現在の意味
現在では "err on the side of..." や "err on the...side" は格言やアドバイスとして(命令文などで)使われることが多く、そういう場合には「~が足らないよりは、~し過ぎるほうが良い」や「~し過ぎるぐらいでいい」という意味です。
例えば
例えば "Err on the side of caution." なら「用心し過ぎなさい(用心し過ぎるぐらいでいい)」です。
この例の解釈
「どれぐらいの用心が適度か?」を判断するのは困難。 だから、「
不用心の側」よりも「
用心の側」に偏って(
誤って)おきなさい。
「石橋を叩いて渡る」や「転ばぬ先の杖」と同じような意味です。
3. 用例
3.1. caution
It is better on your first few weights sessions to
err on the side of caution, and start with a weight which is lighter than you think you can handle.
ウェイト(バーベルとか)を用いた運動を初めてやるときには用心して、「自分が扱える」と思うよりも軽めのウェイトで運動を始めるとよい。
25 people have replied to the invitation, but I've
erred on the side of caution and put out 30 chairs.
募集に25人が応じたが、念のために30脚の椅子を用意した。
# 「来るのは25人だけど(もっと来るかもしれないから)余裕を見て30脚を用意した」
3.2. safety, safe
Err on the side of safety.
安全の側に間違いなさい。
# "caution(用心、警戒)" を "safety(安全)" に置き換えただけの表現です。 "caution" の場合と意味はほとんど変わりません。 よく見かけます。
「どれぐらい安全に気をつけて振る舞えばよいか分からないなら、安全に気をつけすぎなぐらいに振る舞いなさい」ということです。
Err on the safe side.
安全の側に間違いなさい。
# "err on the side of safety" と同じ意味です。
"Err on the
safety side." という言い方もあり、これも同じ意味です。 "safety" は名詞ですが形容詞的に使われています。
Senator John F. Kennedy declared yesterday the United States should "
err on the side of safety" in setting up its defenses against the Communist threat.
ジョンFケネディ上院議員は昨日、共産主義者の脅威に対して米国が「安全なほうに間違う」べきであると宣言した。
# ニューヨーク・タイムズ紙の 1960年の記事。
3.3. right
Err on the right side.
正しい側に間違いなさい。
# "Err on the side of caution" から派生したのだとすれば、この表現は矛盾を含みます。 "Err on the right side." を実践できるなら「正しい側」を分かっているわけですが、"Err on the side of..." 系の表現は「何が適切なのか分からない」が前提なのですから。
3.4. generousity
Err on the side of generousity.
寛大な(気前のよい)ほうに間違いなさい。
# 「どれぐらい寛大に振る舞うべきか見当がつかないなら、非寛容に傾きすぎるよりも寛容に傾きすぎるように振る舞いなさい」とか「寛大に振る舞っておけば間違いはない」ということ。
"generousity" は名詞で、意味は「寛大さ、寛容さ、気前の良さ」。
形容詞 "generous" を用いるなら、"Err on the generous side."。
When I discussed the matter with ministers in July I said that we should
err on the side of generosity.
7月に閣僚と討議したとき、私は「我々は寛容な方向に誤るべきだ」と言った。
# 「不寛容であり過ぎるよりは、寛容であり過ぎるほうが良い」
3.5. lighter
Err on the lighter side.
(色調や運動の激しさなどを)軽めにしておきなさい。
Always
err on the lighter side with brow pencil, otherwise you'll look like Mr. Potato Head with his angry eyes.
ブロー・ペン(眉毛を描くためのペン)は常に軽めを心がけること。 さもないと Mr. Potato Head の怒った眉毛みたいになっちゃいますよ。
Err on the lighter side if you’ve never done a row before.
これまでにロー(ダンベルを用いたウェイト・トレーニングの一種)をやったことがないなら、軽めにすること。
# ウェイトの重量のことなのか、運動量のことなのかは不明です。
If you've ever lifted weights, you've probably wondered more than once just how much weight you should lift. According to a study done by the University of Michigan, most of us tend to
err on the lighter side.
筋力トレーニングをしたことがあるなら、一度ならず疑問に思ったはずです。 自分にはどれぐらいの重さのウェイト(ダンベルとか)が適切なのか、と。 ミシガン大学の研究によると、大部分の人は軽すぎるウェイト選ぶ傾向にあります。
# この例文の "err on the ... side" はここまでの他の例文と違って伝統的な意味(間違う)です。 「大部分の人が不適切に軽いウェイトを使用する」と言っていす。
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