"can't help it" の意味は「それを助けられない」なのか?

2020年3月現在、Google 検索の検索ボックスに "can't help it" と入力すると、サジェストに「それを助けることはできません」という和訳が表示されます。 ですが、この和訳は役に立たないでしょう。

なぜなら、"can't help it" は2つの意味に解釈できるうえ、Google 検索がサジェストするのは使われない方の意味だからです。

以下で、"can't help it" の2つの意味について説明します。

1. "can't help it" の2つの意味

"can't help it" は次の2つの意味に解釈できます:

  1. それを助けられない
  2. (それは)どうしようもない

Google 検索がサジェストするのは 1. のほうです。 "help" を「助ける」の意味に理解すると、この訳になります。

"help" は「助ける」の意味が有名なので 1. の意味を思いつきやすいですが、実際には "can't help it" は 2. の意味でよく使われます。

2. 2つ目の意味について

それでは、どうして "can't help it" が「どうしようもない」という意味にもなるのでしょうか?

それは、"help" に「避ける/防ぐ」といった意味もあるからです。 「避けられない、防げない」ということで「どうしようもない」というわけです。
"help" のこの意味は "can" や "could" を伴う場合に限ります。 またあ、肯定文ではあまり用いられません。

3. 例文

3.1. "can't help it"

"can't help it" の用例です。
I can't help it.
私には(それは)どうしようもない。

# 直訳は「私はそれを避けられない」です。

"it" が何を指すのかは文脈に依存します。 例えば、鼻くそをほじる・朝寝坊する・貧乏ゆすりをするなどの悪い習慣であったり、何かの衝動的な行動であったりです。
But a man can't help it, it's in his genes.
だが、男はそれ(可愛い女の子についつい目が向いてしまうこと)をどうしようもない。 遺伝子に刻み込まれているんだ。

3.2. "can't help it" 以外

"can't help it" 以外で "help" が「避ける・防ぐ・耐える」の意味で使われる例です:

"But it's Thanksgiving. Don't you take vacation and spend your time with your family?"

"Not if I can help it."

「でも感謝祭なんだよ。 休暇を取って家族と過ごさないのかい?」

「出来ることなら、そうしたくはない」

# 「出来ることなら、そうしたくはない」とは「それ(家族と過ごすこと)を避けれるなら、家族と過ごさない」ということです。

"Not if I can help it." で省略されている部分を補うと次の通り:

"I will not spend my time with my family, if I can help it (spending time with my family)."

太字の部分だけ残ったのが、"Not if I can help it." です。 "Not if I can help it." は慣用句としてよく疲れます。 "Not" の後ろにカンマが入っても良さそうなものですが、カンマを入れずに使われるようです。
Sorry everyone, but it can't be helped!
みんな済まない。 でも、(それは)どうしようもないんだ!

# 「(それは)どうしようもない」とは「(それを)避けられない、(それが)不可避」ということです。 「それ」が何を意味するのかは、この文だけでは不明です。

"it can't be helped" は "can't help it" を受動態にしたものです。 "it can't be helped" もよく使われる慣用句です。
We couldn’t help noticing that you were late.
君の遅刻に我々は気付かざるを得なかった。

# "couldn't help noticing" で「気付くことを避けられなかった」という意味になります。 "notice" は「気付く」という意味の動詞です。

「避ける・防ぐ・耐える」の意味の "help" の目的語は、この例文のように動名詞(~ing)であることもあります。

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