米国映画「ブラック・クランズマン」のタイトルの意味を教えて！

2019年に日本で公開された映画『ブラック・クランズマン』。 このタイトルは一体どういう意味でしょうか？

目次
  1. 「ブラック・クランズマン」の意味
    1. 原題
    2. "BlacKkKlansman" は造語
    3. ３つの語の意味
    4. タイトルに込められた意味
  2. ＫＫＫについて
    1. 白人至上主義の秘密結社
    2. ＫＫＫの歴史
    3. 「ＫＫＫ」の語源

1.「ブラック・クランズマン」の意味

1.1. 原題

「ブラック・クランズマン」は米国で制作された映画で、原題（元の英語のタイトル）は "BlacKkKlansman" です。

1.2. "BlacKkKlansman" は造語

"BlacKkKlansman" は明らかに造語です。 次の３つの語の合成でしょう：

  1. black
  2. KKK
  3. Klansman

1.3. ３つの語の意味

  1. black： ここでは「黒人」という意味です。
  2. KKK： Ku Klux Klan（クー・クラックス・クラン）という組織の略称です。
  3. Klansman：「ＫＫＫのメンバー」という意味です。 "Klansman" という語は常に大文字で始まります。

1.4. タイトルに込められた意味

この映画は実話に基きます。 その実話では、黒人の刑事が電話で白人になりすましてＫＫＫに加入して潜入捜査を行います（実際にＫＫＫのメンバーと接触するのは別の白人の刑事）。

「黒人（Black）がＫＫＫのメンバー（Klansman）になる」すなわち「Black + KKK + Klansman」ということでタイトルが "BlacKkKlansman" なのでしょう。

2. ＫＫＫについて

2.1. 白人至上主義の秘密結社

ＫＫＫという名称の組織は米国南部を中心に複数存在しますが、そのうち最も有名なのは米国南部を発祥の地とする白人至上主義の秘密結社です。 この「最も有名なＫＫＫ」は、頭部から足首までをスッポリと覆う白装束（フードとローブ）で知られます。

2.2. ＫＫＫの歴史

設立

「最も有名なＫＫＫ」は米国の南北戦争において南軍として戦った兵士たちが 1866年にテネシー州で設立したもので、殺人・リンチ・放火・レイプ・爆弾使用といったテロリズム的な手法を用いてアフリカ系米国人に市民権を与えることに反対してきました。

このＫＫＫのメンバーはプロテスタント系のキリスト教を信仰する白人（いわゆるＷＡＳＰ）で、黒人だけでなくユダヤ人やカトリック教徒も敵視しています。

ＫＫＫが形成された経緯を次のように説明する文献もあります：

南北戦争の後には南部諸州の政府が弱体化あるいは消滅したため黒人が暴動を起こす恐れがあった。 アフリカ系米国人に市民権を与えることに対し根強い反対が（米国南部には）あったこともあり、（プロテスタント系の白人による）非公式の自警団や武装パトロール団がほぼ全ての地域で形成された。「Men of Justice（正義の人たち）」や「Pale Faces（白い顔、白人）」、「Order of the White Rose（白バラ会）」などがそれである。 こうした組織のうち最も有名なのがＫＫＫであり、類似する小さな組織を数多く吸収して大きくなった。

こうして設立されたＫＫＫの威圧により南部地域では黒人が選挙に行き辛くなり、南部派が州政府を支配するようになりました。

崩壊

ＫＫＫの下部組織には向こう見ずな無法者が多く上層部の指示を守らなかったうえ、ＫＫＫのメンバーではない者がＫＫＫのコスチューム（覆面付き）を身に着けＫＫＫを名乗って暴力行為を働く事件も多発しました。

そんな状況のなか、1869年にＫＫＫのリーダーを務めていたフォレスト（Nathan Bedford Forrest、元は南軍の将軍）という人物がＫＫＫの解散を指示したうえで、リーダーの座（グランド・ウィザード）を退きました。 そのときの彼の言葉は次の通り：
"...being perverted from its original honorable and patriotic purposes, becoming injurious instead of subservient to the public peace"
「...設立当初の誇り高く愛国的な目的から外れ、公共の平穏に貢献するどころか、これを損なう有様である」

ただし、ＫＫＫの解散後もＫＫＫの下部組織は残存したので、1870年に連邦裁判所がＫＫＫをテロ組織に認定し、多くのＫＫＫメンバーが暴力行為やテロ行為で訴追されました。

復活

その後の 1915年、キリスト教の聖職者であったシモンズ（William J. Simmons）なる人物が、宗教色を強めたＫＫＫを復活させ、エリザベス・テイラーなどの著名人の後押しもあって米国南部だけなく北部にまでＫＫＫが広まりました。

ピーク時の 1920年代半ばには、一説によると４００～５００万人もがＫＫＫに所属したと言われます（ただし実際の人数はそこまで多くはなかったとされる）。

ＫＫＫのメンバー数はその後急速に減少し、1930年には３万人にまで減ったと推定されています。

現在

1960年代にＫＫＫの一派が米国南部で一時的に勢力を盛り返したものの、1990年代の時点でメンバー数は数千人ほどと推定されます。 しかし、２１世紀の現在でもＫＫＫを名乗る団体が数十も存在します。

2.3.「ＫＫＫ」の語源

"Ku Klux Klan" は、ギリシャ語の "κύκλος"(*) とスコットランドのゲール語 "klan" を組み合わせて作った言葉です。

(*) ローマ字で表記すると "kyklos"（ギリシャ語） あるいは "kuklos"（古代ギリシャ語）。

κύκλος

"κύκλος" の意味は「サークル」です。

ＫＫＫにおける "κύκλος" は「（図形の）円」ではなく「（同じ趣味や目的を持つ人たちの）サークル」の意味でしょう。 "Ku Klux Klan" が「仲間たちのサークル」を意味すると説明する文献があるので。

klan

"klan" の意味は「一族、氏族」です。

"klan" は "clan" という綴りで英語になっていますが、略称を『ＫＫＫ』にしたいから英語の "clan" と同じ意味のゲール語 "klan" を用いたのでしょう。
  • "klan" と "clan" の発音はだいたい同じで、どちらもカタカナで表記すると「クラン」です。
  • ＫＫＫは一時期 "KuKlux Clan" という名称で知られました。

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