「ゴッサム・シティー」の「ゴッサム」の意味は? 由来は?

質問: バットマンが活躍する街の名前「ゴッサム・シティー」の「ゴッサム」とは、どういう意味ですか?

回答:「山羊の家」という意味です。 詳しくは以下をご覧ください。

1. 元の英語

「ゴッサム」を英語に戻すと "Gotham"。 この "Gotham" の意味が上述の「山羊の家」です。

2. "Gotham" の語源

"Gotham" は次の2つのパーツから成ります:

  1. gāt ・・・「山羊」を意味する古英語
  2. hām ・・・「家、ホーム」を意味する古英語

3. もともとは英国の地名

"Gotham" は英国ノッティンガムシャー郡に実在する村の名前です。 ゴッサム村の現在の人口は 1,600人ほど。

マニア向け情報

  • "Gotham" はもともとは(1086年の時点では)"Gatham" でした("G" の次が "o" ではなく "a")。
  • 英国の村の意味での "Gotham" は「ガウタム」と発音されます。

4. 作中の由来

映画『バットマン』の原作である漫画にゴッサム・シティー(Gotham City)が初めて登場したのは 1940年のことです。

以来、作中でキャラクターがちょくちょくゴッサム村に言及していましたが、1996年に出版された『Batman Chronicles vol 1 #6』に収録される「Cityscape」の作中で、「ゴッサム・シティー」という名の由来に関する決定的な事実が明かされました:

  1. ゴッサム・シティーは当初、危険な精神異常者(後述)を収容する目的で造られた。
  2. ゴッサム・シティーは英国のゴッサム村にちなんで「ゴッサム」と命名された。
ゆえに、(『バットマン』の作中の設定では)「ゴッサム・シティー」という名称の由来は英国のゴッサム村です。
ただし、これは後から付け加えた設定の可能性が濃厚です。 1996年には『バットマン』の当初の原作者ビル・フィンガー(1914~1974年)は既に他界しています。

5. 作品外での由来

「ゴッサム・シティー」の作品世界の外側での(メタな)由来は、米国ニューヨーク市に実在する宝飾店 "Gotham Jewelers" です。

この辺の経緯は次の通り:

『バットマン』の原作者ビル・フィンガーは当初、バットマンが活躍する舞台をニューヨーク市にしようと考えていました。

「う~ん、やっぱニューヨークかな」

ですが、思い直しました。

「やっぱり、実在する都市じゃなく架空の都市を舞台にしたい」

適当な名称を求めてニューヨーク市の電話帳をパラパラとめくるビル・フィンガー氏。

そうして目に止まったのが「Gotham Jewelers(ゴッサム宝飾店)」でした。

「これにしよう」

こうして、バットマンの街の呼称が「ゴッサム・シティー」に決まりました。

6. 店名 "Gotham Jewelers" の由来

宝飾店の店名 "Gotham Jewelers" は、ニューヨーク市の愛称 "Gotham" に由来するかもしれません。

そう、ニューヨーク市には "Gotham" という愛称があります。

少し長くなりますが、ニューヨーク市に "Gotham" というニックネームが付いた経緯を次に記載します。

ニューヨーク市の愛称 "Gotham"

1807年、米国の作家ワシントン・アービング(1783~1859年)が米国ニューヨーク市のことを "Gotham" と呼びました(*)
(*)『Salmagundi; or The Whim-whams and Opinions of Launcelot Langstaff, Esq. & Others』という文学雑誌(通称『Salmagundi』)でのことです。
アービングがニューヨーク市を "Gotham" と呼んだ理由は英国の民話『ゴッサムの賢い男たち(Wise Men of Gotham)』(*)にあります。

(*) 15~16世紀に『Merrie Tales of the Mad Men of Gotham(ゴッサムの気狂い男たちの愉快な話)』という民話集に編纂された。

マザーグースの童話集にも『ゴッサムの賢い3人の男(Three Wise Men of Gotham)』という題名で収録されている。

民話『ゴッサムの賢い男たち』

民話『ゴッサムの賢い男たち』は、公道の建設を命じられそうになった村人たちが、それを回避するため気が狂った振りをする話です。

次のようなお話です。

あるとき、イングランド王ジョン(1166~1216年)が国内を視察しようと思いたちました。 当時、王が移動に用いる道は「王の道(Royal Highway)」と呼ばれる公道で、視察ルートに選ばれた村が公道を建設および維持する費用と労働を負担せねばなりませんでした。

そこでゴッサム村の人たちは視察ルートに選ばれまいと、気が狂った(精神異常の)振りをすることにしました。 当時「気狂い」は伝染病のように伝染すると考えられていたので、村人が気狂いならジョン王は気狂いの伝染を恐れてゴッサム村を視察ルートから外すだろうと考えたのです。

公道建設を命じるメッセンジャーとしてジョン王の騎士がゴッサム村にやってきたとき、村人は気狂いを装うための一連のパフォーマンス(*)を行いました。

こうしたパフォーマンスの結果、ゴッサム村は「王の道」のルートから外れることになりました。
(*) ウナギを捕らえるのに溺死させようとする(魚が溺死するはずがない)など愚者の振りをした。

皮肉の道具

アービングは『Salmagundi』誌で、ニューヨーク市の文化や政治を皮肉ってゴッサム村になぞらえました。

皮肉として用いたのですから、 この "Gotham" は、「王を騙した賢い人たちが住む村」ではなく「信じがたいほどのバカ者の村」の意味でしょう。

ですが、やがてその "Gotham" がニューヨーク市の愛称として定着しました。
ニューヨーク市の愛称としての "Gotham" は「ガサム」や「ガーサム」と発音されます。 バットマンの "Gotham City" の "Gotham" も同様です。

7. まとめ

  1. 「ゴッサム・シティー」の名前の由来は:
    • 作品世界の中においては、英国のゴッサム村。
    • 作品外では、ニューヨーク市に実在する宝飾店 "Gotham Jewelers" の店名。
  2. 店名 "Gotham Jewelers" の由来はニューヨーク市の愛称 "Gotham" かもしれない。

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