質問: ネット・小説・ゲームなどで「アバター」という言葉が使われますが、この「アバター」とは一体どういう意味ですか?
回答:「アバター」を英語に戻すと "avatar" で、この "avatar" の意味は次の通りです:
1. "avatar" の意味
- ヒンドゥー教の神(特にヴィシュヌ神)が人・超人・動物の姿を取ること。 神の化身(けしん)、現身(うつしみ)。
- 何らかの概念や性質を具体的に表す存在。(1)
- ネット上のコミュニティー(掲示板やチャットルームなど)で参加者が自分自身を表すのに用いるアイコンや画像など。
- バーチャル・リアリティー(仮想現実)やサイバースペース(2) における移動可能な姿。 例えば、オンライン・ゲームで自分が操るキャラクター。
(1) 例. avatar of beauty 美の化身、avatar of evil 悪の権化
(2) ネット上でコミュニケーションが発生する場。 狭義では3次元でキャラクターたちが動き回りコミュニケーションを行う仮想空間。2. ネット用語としての "avatar"
2.1. Habitat
"avatar" という語がネット関連の意味(上記の 3. や 4. の意味)で始めて使われたのは 1986年です。
この年に発表された Lucasfilm Games 社(現 LucasArts 社)が発表した "Habitat" という多人数参加型オンライン・ロールプレイング・ゲーム(RPG)(*)で、参加者が操るキャラクターが "avatar" と呼ばれました。
(*) "Habitat" はRPGといってもモンスターを倒してレベルアップするゲームではありません。 ネット上の仮想世界における仮想コミュニティーで他人と交流するゲームです。 RPGは「役割(ロール)を演じる(プレイ)という」というのが本来の意味なので、戦闘がなくてもレベルアップがなくても "Habitat" はRPGです。
2.2. Ultima IV
1985年に発売開始された "Ultima IV(ウルティマ4)" というゲームにも、"avatar" という言葉が登場します。 このゲームの副題が "Quest of the Avatar(アバターの探求)" であることからも明らかです。
ですが、このゲームにおける "avatar" はネット用語の "avatar" ではなく単にゲームのストーリーの関係で登場する言葉です。
"Ultima IV" はネットゲームではなく、オフラインで遊ぶゲームです。 このゲームでプレイヤーは、8つの徳を修めて "Avatar" となることを目指します。 このゲームにおいて "Avatar" とは「聖者」のようなものでしょう。 まるで「神の化身」のような存在ということでの「聖者」でしょうか。
2.3. ネット用語としての普及
ネット関連の言葉としての "avatar" が世間に広まったのは、ニール・スティーブンソンという作家が 1992年に発表した "Snow Crash" という小説がきっかけでした。 この小説では、バーチャル・リアリティーの社会において参加者が操作するキャラクターが "avatar" と呼ばれます。
3. "avatar" の語源
"avatar" の語源は「降臨(*)」を意味するサンスクリット語 "ava-tāra" です。 英語の "avatar" が成立したのは18世紀後半です。
(*) 神が肉体を持つ存在として地上に降りてくること。