映画・ビジネス・漫画など様々な分野で見かける言葉「エージェント」。
こうした「エージェント」の言葉の由来は、どういうものでしょうか? どうしてスパイのことを「エージェント」と呼ぶのでしょうか?
1. 英語 "agent" の意味
「エージェント」を英語に戻すと "agent" です。
複数の英英辞典に記載される "agent" の意味をまとめると次の通り:
- 「諜報員」を意味する英語 "secret agent" の略称。スパイ。
- 政府機関で働く人
- 他の人の代わりに行動する権限や、他の人を代理する権限を与えられた人。 代理人。
- 何かを行う・引き起こす・達成するための手段。 道具。
- 何らかの作用を引き起こす物質や生体や現象。 何かを引き起こす力、原動力。。
- 行う者/物、力や権限を行使する者/物
- 特定のタスク(コンピューターが行う作業)を自動化するためのプログラム
- 《言語学》動作主(「主語」みたいなもの)
- 《動詞》~の代理人(エージェント)として行動する。
例. 作家のエージェント、スポーツ選手のエージェント。 エージェントはタレントの代理人として仕事を探したり契約を結んだりする。
例. Wind is an agent of plant pollination. 風は植物の受粉のエージェントである。
例. a chemical agent 化学薬品、an infectious agent 感染体、感染性因子
他動詞と自動詞の意味がある。 他動詞の例. Who will agent your next book? あなたの次の著書のエージェントは誰ですか?
2. カタカナ語「エージェント」の意味
国語辞典が記載する「エージェント」の意味は次の通り:
- 代理人。代理業者。
- スパイ。諜報員。
- 状況に応じ利用者の意図に沿う一連の作業を自動的に行うコンピューターシステム
3. "agent" と「エージェント」の比較
国語辞典に記載されるカタカナ語「エージェント」の意味はすべて、原語である "agent" にも存在します。
国語辞典には載っていませんが、枯葉剤として知られるエージェント・オレンジやエージェント・パープルの「エージェント」は "agent" 5. の意味「何らかの作用を引き起こす物質」です。
"agent" の 2.(*) と 4.(†) と 6.(‡) に対応する意味がカタカナ語「エージェント」には存在しません。(*)「政府機関で働く人」
(†)「何かを行う・引き起こす・達成するための手段。 道具」
(‡)「行う者/物、力や権限を行使する者/物」4.「エージェント」は、いかに「スパイ」の意味になったのか?
4.1. "agent" の語源
"agent" の語源は「行う」などを意味するラテン語の動詞 "agere" です。
このラテン語 "agere" から「何らかの作用を生み出す人または物」を意味する中世英語 "agent" を経て、現代英語 "agent" が成立しました。
4.2. "agent" の歴史
"agent" という語は次の順序で意味を獲得したとされます:
- 行う者/物、力や権限を行使する者/物 ・・・ 1570~1580年代
- 代理人・・・ 1590年代
- スパイ ・・・ 1916年(確認される最古の用例)
4.3. 推測
"agent" の語源と歴史から推測すると、"agent" は次の順序(上から下に進む)で意味を獲得して「スパイ」という意味を有するに至ったと思われます:
- 行う(ラテン語 "agere")
- 行う者/物、力や権限を行使する者/物("agent" の 6. の意味)
- 何かを行うための道具("agent" の 4. や 5. の意味)
- そんな道具みたいな役割の人、代理人("agent" の 3. の意味)
- 政府の代理人("agent" の 3. の意味)
- 政府の職員("agent" の 2. の意味)
- 諜報関係の政府職員("agent" の 2. の意味)
- (政府職員に限らず)スパイ("agent" の 1. の意味)