「ブラック・ウィドウ」の意味や名称の由来

ブラック・ウィドウ」というカタカナ語を見かけることがありますが、これは一体どういう意味の言葉なのでしょうか?

「ブラック・ウィドウ」は "black widow"

「ブラック・ウィドウ」は "black widow" という英語をカタカナで表記した言葉です。

"black widow" の意味

クモとしての意味

"black widow" は「クロゴケグモ」という意味です。 クロゴケグモは Latrodectus mactans という学名の毒蜘蛛です。 クロゴケグモのメスは、その名の通りツヤツヤした黒色の体表で、そこに赤い模様(砂時計の形に似る)が入っています。

文献によっては、「Latrodectus 属の毒蜘蛛であって黒い体表に赤色の模様を持つものをクロゴケグモである」としています。 タランチュラやセアカゴケグモも Latrodectus 属の毒蜘蛛です。 タランチュラは外見的にも後家蜘蛛ではありませんが、セアカゴケグモも黒地に赤の模様なので、"black widow" の一種でしょう。

上記をまとめると、"black widow" の意味は次の2つです:

  1. Latrodectus mactans という種類のクモ
  2. Latrodectus 属のクモのうち Latrodectus mactans に外見や行動が似ているもの

"black widow" という名称の由来

(Latrodectus mactans に限らず)Latrodectus 属のクモは交尾後にメスがオスを食べることがあります。 言わば妻が夫を亡き者にしてしまうので、Latrodectus 属のクモは「widow(後家)」と呼ばれます。

Wikipedia(英語版)によると、メスがオスを食べる率は種類により異なりますし、オスに逃げ場がない実験環境下で多発するそうです。 ゴケグモ(Latrodectus 属)のオスは、すでにオスを食べて自分(オス)が食べられる恐れが少ないメスを選ぶことが多いという研究結果も存在します。

クモ以外の意味

英語の "black widow" には、「夫や恋人(男性)を殺害する女性」という意味もあります。 特に何人もの夫や恋人を殺してきた女性が "black widow" と呼ばれます。 毒グモの意味で使われている "black widow" を、夫殺しの女性の呼称にも使うようになったのでしょう。

"black widow" と「クロゴケグモ」

「クロゴケグモ」を漢字で書くと「黒後家蜘蛛」となります。「黒い後家のクモ」というわけです。 「後家」とは未亡人(夫と死別したのち再婚せずにいる女性)という意味です。

そして、"widow" は「未亡人」という意味なので、"black widow" で「黒い未亡人」や「黒い後家」という意味になります。

「クロゴケグモ」という和名は、"black widow" という英語を訳したものでしょう。 Latrodectus mactans は北米原産のクモだと考えられています。

カタカナ語の「ブラック・ウィドウ」

カタカナで「ブラック・ウィドウ」と記載される場合、それは節足動物のクモそれ自体ではなく、歌謡曲・小説・テレビ番組・映画・ゲームなどのタイトルやバンド名、漫画のキャラクターの名前などであることが多いでしょう。

「ブラック・ウィドウ」という名称は多くの場合、クロゴケグモ的なイメージ(男を殺す女)を求めて使用されているでしょう。 例えば 2020年に公開予定の米国映画「ブラック・ウィドウ」(原題も "Black Widow")には、"Black Widow" という名前のキャラクターが登場しますが、このキャラクターは女性の暗殺者です。

おまけ

ゴケグモの毒

Latrodectus 属の毒グモの毒はさほど強力ではなく、このクモに噛まれて健康な人が死ぬのは極めて稀です。 ゴケグモではありませんがタランチュラも実は毒は弱いです。

ややこしい話

ややこしいので割愛したいけれど、その一方で正確を期すために盛り込んでおきたい。 そんな内容を以下に記載しておきます。

  1. クロゴケグモと "black widow" はイコールではありません。 "black widow" のほうは人によってはセアカゴケグモも含める(Latrodectus 属の一種であり、 black widow の定義に合致するから)でしょうが、「クロゴケグモ」はあくまでも "Latrodectus mactans" のみを指すからです(例えば「セアカゴケグモ」には "Latrodectus hasseltii" という対応する学名が別途にある)。
  2. Wikipedia(英語版)の Latrodectus のページには、"Red Widow" という種類のクモに関する記述があります。 "Red Widow" を直訳すると「赤後家」なので、これがセアカゴケグモの英名かと思ってしまいますが、"Red Widow" の学名は Latrodectus bishopi です。 セアカゴケグモの学名は上記のように Latrodectus hasseltii なので、"Red Widow"≠セアカゴケグモなのです。

    Latrodectus bishopi の画像を見ると脚が赤いので、セアカゴケグモとは明らかに別物です。 ややこしいですが、セアカゴケグモはブラック・ウィドウに分類されるでしょう。