米国映画「ブラック・クランズマン」のタイトルの意味

ブラック・クランズマン」というタイトルの映画が 2019年3月に日本で公開されますが、このタイトルは一体どういう意味なのでしょうか?

原題

「ブラック・クランズマン」は米国で制作された映画で、原題(元の英語のタイトル)は "BlacKkKlansman" です。

原題の意味

"BlacKkKlansman" は造語

"BlacKkKlansman" は明らかに造語です。 "black"、"KKK"、そして "Klansman" という3との語を合成したのでしょう。

それぞれの意味

  1. black: ここでは「黒人」という意味です。
  2. KKK: Ku Klux Klan(クー・クラックス・クラン)という組織の略称です。
  3. Klansman: KKKのメンバーのことです。 "Klansman" という語は常に大文字で始まります。

タイトルの意味

この映画は、黒人の刑事が電話で白人になりすましてKKKに加入して潜入捜査を行う(実際にKKKのメンバーと接触したのは白人の刑事)という実話(ノンフィクション小説)に基づいています。

「黒人(black)がKKKのメンバー(Klansman)になる」すなわち「black + KKK + Klansman」でということ "BlacKkKlansman" というタイトルにしたのでしょう。

KKKについて

KKKとは

KKKという名称の組織は米国南部を中心として複数存在しますが、そのうち最も有名なのは米国南部を発祥の地とする白人至上主義の秘密結社です。 頭部から足首までをスッポリと覆う白装束(フードとローブ)が有名です。

設立

この最も有名なKKKは米国の南北戦争において南軍として戦った兵士たちがテネシー州で 1866年に設立したもので、殺人・リンチ・放火・レイプ・爆弾使用といったテロリズム的な手法を用いてアフリカ系米国人に市民権を与えることに反対してきました。 このKKKのメンバーはプロテスタント系のキリスト教を信仰する白人(いわゆるWASP)で、黒人だけでなくユダヤ人やカトリック教徒も敵視しています。

次のように説明する文献もあります:

「南北戦争の後には南部諸州の政府が弱体化あるいは消滅してしまったので、黒人が暴動を起こす恐れがあった。 アフリカ系米国人に市民権を与えることに対する根強い反対も(米国南部には)存在したこともあって、(プロテスタント系の白人による)非公式の自警団や武装パトロール団がほぼ全ての地域で形成された。 Men of Justice(正義の人たち)や、Pale Faces(白い顔、白人)、Order of the White Rose(白バラ会)などがそれである。 そして、こうした組織のうち最も有名なのがKKKであり、類似する小さな組織を数多く吸収して大きくなった」

こうして設立されたKKKの威圧により南部地域では黒人が選挙に行き辛くなり、南部派が州政府を支配するようになりました。

崩壊

しかし、KKKの下部組織には向こう見ずな無法者が多く上の指示を守らなかったうえ、KKKではない者たちがKKKのコスチューム(覆面付き)がもたらす匿名性を利用し、KKKを名乗って暴力行為を働くという事件も多発しました。

そんな状況のなかで、1869年にKKKのリーダーを努めていたフォレスト(Nathan Bedford Forrest、元は南軍の将軍)という人物が、KKKの解散を指示して、リーダーの座(グランド・ウィザード)を退きました。 そのときの彼の言葉は次のようなものです:
"...being perverted from its original honorable and patriotic purposes, becoming injurious instead of subservient to the public peace"
設立当初の誇り高く愛国的な目的から外れ、公共の平穏に貢献するどころか、これを損なう有様である

ただし、KKKの解散後もKKKの下部組織はその後も存続していたので、1870年に連邦裁判所がKKKをテロ組織に認定し、多くのKKKメンバーが暴力行為やテロ行為で訴追されました。

復活

その後、キリスト教の聖職者であったシモンズ(William J. Simmons)という人物が 1915年に宗教色を強めたKKKの復活させ、エリザベス・テイラーなどの著名人の後押しもあって米国南部だけなく北部にまでKKKが広まりました。 一説によるとピーク時の 1920年代半ばには400~500万人もがKKKに所属していたと言われます(ただし実際の人数はそこまで多くはなかったと考えられている)。 KKKのメンバー数はその後急速に減少し、1930年には3万人にまで減っていたと推定されます。

現在

KKKは、その一派が 1960年代に米国南部で一時的に勢力を盛り返したものの、1990年代の時点でメンバー数は数千人ではなかったかと推定されています。 しかし、21世紀の現在でもKKKを名乗る団体が数十も存在します。

KKKの語源

"Ku Klux Klan" は、"κύκλος(kyklos、kuklos)" というギリシャ語と "klan" というスコットランドのゲール語とを組み合わせて作った言葉です。

"κύκλος" は「サークル」という意味で、"klan" は「一族、氏族」という意味です。 "Ku Klux Klan" が「仲間たちのサークル」という意味だと説明する文献もあるので、"κύκλος(サークル)" は「円」ではなく「(同じ趣味や目的を持つ人たちの)サークル」のほうの意味なのでしょう。

"klan" という語は "clan" という綴りで英語に輸入されていますが、それをあえて "klan" としているわけです。 文献によって「"klan" はスコットランドのゲール語だ」と説明していたり、「"clan" を "klan" としたのは3つの語の先頭の文字を『k』で揃えるためだ」と説明していたりしますが、おそらくどちらの説明も正しいのでしょう。 つまり、先頭の文字を『k』で統一するために、英語の "clan" ではなく、それと同じ意味を持つスコットランドのゲール語 "klan" を用いた、ということだと思います。

"clan" の語源は "klan" です。 発音も同じようなものでカタカナで表記すればどちらも「クラン」となります。 KKKは一時期 "KuKlux Clan" という名称で知られていました。